不適切保育シンキング

事例:「何をしているの!?早く入りなさい!」と強い口調で保育室に入るように言った。

こんにちは。
社会保険労務士法人こどものそら舎です。

最近、保育施設における不適切保育が相次いで発覚しています。
どんな不適切保育が行われていたのか、そのときの状況などが
報道により明らかになってきています。

こどものそら舎では、私たちの保育を改めて考える機会にしたいと思い、
「Let's 不適切保育シンキング」を毎週月曜日にお届けすることにしました。

「Let's 不適切保育シンキング」は、保育における一場面を取り上げ、
不適切保育に当てはまるかどうか、
当てはまる場合は「不適切保育の行為類型(5類型)」のどれに当てはまるか、
不適切保育にしないためにどう働きかけたらよいか、などを
みんなで話し合えるようなワーク形式になっています。

職員会議や園内研修などで職員に配り、みんなで考え、話し合ってみましょう。

正解はありません。
みんなで保育を振り返り、考える機会に活用していただけるとありがたいです。

〓〓〓〓〓〓〓〓★[保育における一場面]★〓〓〓〓〓〓〓〓

A先生は、外遊びの後なかなか保育室に入らないBさん(4歳児)を見て、
「何をしているの!? 早く入りなさい!」
と強い口調で保育室に入るように言った。

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★考えてみよう・1
A先生の行為は、不適切保育に当てはまるでしょうか?
当てはまる場合は、次の「不適切保育の行為類型(5類型)」のうち、
どれに当てはまるでしょうか? (複数選択可)

1.子ども一人一人の人格を尊重しない関わり
2.物事を強要するような関わり・脅迫的な言葉がけ
3.罰を与える・乱暴な関わり
4.子ども一人一人の育ちや家庭環境への配慮に欠ける関わり
5.差別的な関わり


★考えてみよう・2
A先生の行為は、『こども基本法』の4つの権利のうち、
どの権利を侵害しているでしょうか? (複数選択可)

1.差別の禁止(差別のないこと)
2.生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)
3.こどもの意見の尊重(意見を表明し参加できること)
4.こどもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)


★考えてみよう・3
A先生の行為は、『子どもの権利条約』の4つの権利のうち、
どの権利を侵害しているでしょうか? (複数選択可)

1.生きる権利(安心・安全な居場所や食べ物があり、必要な手当てを受けられること)
2.育つ権利(生活したり遊んだりして、その子らしさを尊重されながら成長できること)
3.守られる権利(あらゆる暴言・暴力・虐待・プライバシーの侵害などから守られること)
4.参加する権利(自由に意見を言ったり、自ら考えたり決定したりして活動できること)


★考えてみよう・4
もし自分がBさん(こども)だったら、どう思いますか?


★考えてみよう・5
もし自分がA先生だったら、Bさん(こども)にどんなふうに働きかけますか?


◆参考資料

■全国保育士会『保育所・認定こども園における人権擁護のセルフチェックリスト
 ~「子どもを尊重する保育」のために~』
 https://z-hoikushikai.com/download.php?new_arrival_document_id=123

■ユニセフ『子どもの権利条約カードブック』
 https://www.unicef.or.jp/kodomo/nani/siryo/pdf/cardbook.pdf?210831
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来年度4月1日から施行される『こども基本法』では、
次の4つの権利が「基本理念」として定められました。

1.差別の禁止
2.生命、生存及び発達に対する権利
3.こどもの意見の尊重
4.こどもの最善の利益

不適切保育は、これらの4つの権利を侵す行為と言えます。

不適切保育が生じる背景については、令和2年度に行われた
「不適切保育に関する対応についての調査研究」において、
こどもの人権・人格尊重に関する「保育士の認識」が十分でなかったり、
「職場環境」が整っていなかったりする場合は、
不適切保育が生じやすいことが報告されました。

また、不適切保育を防止するために保育施設が担う役割として、
以下の点を挙げています。
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・保育士に対する教育・研修の実施
・第三者評価等を通じた保育士の気づきの促進
・計画作成や振り返りにおける配慮
・不適切な保育が生じることのない職場環境及び職員体制の整備
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不適切保育を防止するためには、
「不適切保育とはどんな保育か」「どう働きかけたらよいか」を
保育施設に関わるすべての人が考え、意見を共有しながら、
こどもの権利・人権に関する理解を深めていくことが必要です。

来年度から『こども基本法』が施行されることを契機として、
不適切保育に対する理解を深め、こどもの安心・安全が保障されるよう、
職員が安心・安全に保育に取り組めるよう、みんなで取り組んでいきましょう。


「Let's 不適切保育シンキング」などを活用した、
不適切保育に関する園内研修もやっています。ぜひお声かけください。


◆参考資料

■厚生労働省「不適切保育に関する対応についての調査研究」について
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000135739_00005.html