園長先生からの質問 Q15
“保育に役立つ”園長のための保育園の人事労務講座
~よい労務管理はよい保育を生む土づくり~
この前、うちの保育園に労働基準監督署の調査の連絡があって、その中で準備する書類の一つに「賃金台帳」とありました。給与明細を準備しておけばいいですか。
1、給与明細=賃金台帳なのでどちらでもいい
2、勤怠記録、支給金額、控除金額の記載があるもの
3、賃金計算期間など8つの法定項目の記載があるもの
4、毎月、職員に渡している給与明細の控え
5、「賃金台帳」と記載のある書類
答え(1つ)
答えの詳細
法定3帳簿とよばれる書類の中でも、「賃金台帳」は特に重要なものです。
労働基準法108条により、保育園ごとに「賃金台帳」を整備しなければなりません。
賃金台帳とは、ざっくりといえば毎月職員へ渡している給与の明細書ではなく、
保育園内で1年間、職員ごとの給与関連の全てを管理、記録、保管している記録簿のことです。
今回のように労働基準監督署や年金事務所などの調査、役所の監査があった時などには、
必ずといってよいほど、賃金台帳の提示を求められます。
その際に、従業員へ配布している「給与明細」を提示して是正勧告を受けてしまう保育園さんがあります。
また、社会保険や雇用保険などの手続きにおいて指導を受けてしまい、
各種手続きや給付が遅れてしまう保育園さんもあります。
理由は、まず「給与明細」が以下の法定の要件を満たしていないことから、「賃金台帳」としては不備があることです。
賃金台帳では、給与に関する必要な項目を漏れなく把握できるため、
所得税法、健康保険法、厚生年金保険法、労働保険料徴収法による税や保険料算定の基礎にもなります。
また、「給与一覧表」など呼び方の違いに関わらず、法定項目の記載が必要で、労務管理面からも欠かせないものです。
賃金台帳として認められるためには、以下の8つの法定項目が記載されていなければいけないので確認してみましょう。
1.氏名
2.性別
3.賃金計算期間
4.労働日数
5.労働時間数
6.残業時間、休日、深夜労働時間数
7.基本給、手当、その他の賃金ごとの金額
8.税金など控除される金額
給与明細に関しては8つの項目の全てが記載されてなくても明細として使用可能です。
大きく分けると以下の3項目が記載されているでしょう。
勤怠記録・・・勤務日数や勤務時間
支給金額・・・基本給など支払われるお金
控除金額・・・社会保険料や税金など控除されるお金
「給与明細」でも支給金額や控除金額の記載漏れはないと思いますが、法定の「賃金台帳」と異なり、
賃金計算期間、残業時間、休日、深夜労働時間数などが記載なく指摘されることが多いです。
次に、給与明細は、「職員にとって銀行振込額を確認するもの」という位置付けが強いものです。
賃金台帳は、「使用者が職員の賃金の支払い等を管理するもの」で、保育園内で管理する義務があるものです。
そのため賃金台帳は、契約職員、パートタイマーなどすべての職員のものを「事業所ごとに」「賃金の支払いのたびに」作成し、
保育園内でパソコンでもいいので3年間きちんと保存しておく必要もあるんです。なお、賃金台帳に、所属、職名、入社年月日、住所その他給与計算に関係する事項をあわせて記載しておくと便利です。
■労働基準法 第108条
使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。
■労働基準法施行規則 第54条
使用者は、法第108条の規定によつて、次に掲げる事項を労働者各人別に賃金台帳に記入しなければならない。
1.氏名
2.性別
3.賃金計算期間
4.労働日数
5.労働時間数
6.法第33条若しくは法第36条第1項の規定によつて労働時間を延長し、若しくは休日に労働させた場合又は午後10時から午前5時までの間に労働させた場合には、その延長時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数
7.基本給、手当その他賃金の種類毎にその額
8.法第24条第1項の規定によつて賃金の一部を控除した場合には、その額
保育士がいきいき働く、保育園が元気に動く仕組みづくりを支援している社会保険労務士・中小企業診断士の関山です。
専門はこれまでの保育業界での経験を活かした保育園の労務支援・運営支援と想い入れたっぷりの分野です。
珍しい経験から鎌倉・逗子・葉山地域の保育園さまを始め、全国の保育園さまからお問合せいただくことも増えてきました。
そこでここでは園長先生からの労務面やキャリアパスなどに関するご質問やご希望に応えて、
保育園や保育士に役立つ「保育園育て」「保育士育て」の各種ノウハウをお送りしていきます。
ぜひ日頃の保育園の運営や保育士の労務管理、人材育成、キャリアパスなどの参考にされてください。
☆園ごとの具体的な雇用管理やマネジメント等の働きやすい職場環境づくりのための対策などはご遠慮なくご相談ください☆
(社会保険労務士事務所こどものそら舎:http://kodomonosora.jp/)