園長先生からの質問 Q10
“保育に役立つ”園長のための保育園の人事労務講座
~よい労務管理はよい保育を生む土づくり~
同じ変形労働時間制でも、1年間と1か月では園の労務管理の方法も変わるんですね。うちの園は1年間でそんなに大きな繁閑もないですし、年間2085時間の上限まで勤務する予定もありません。協定書の届出や年間カレンダーも不要で、労務管理がしやすそうな1か月単位の変形労働時間制でシフトを組んでみたいと思います。1か月単位の変形労働時間制では、1か月(31日)で何時間が上限の時間になりますか。
1、40時間×4週間=160時間
2、40時間×(31日÷7日)≒177時間
3、40時間×(30日÷7日)≒172時間
4、40時間×(31日÷7日)≒178時間
5、2085時間×12か月≒173時間”
答え(1つ)
答えの詳細
“1週の労働時間は40時間が法定の労働時間ですが、法定労働時間を週40時間にする方法は、毎週40時間でなくてもかまいません。
1か月を平均して40時間にする方法でも、1年間を平均して40時間にする方法でもよく、どちらも変形労働時間制といわれるものです。
1か月の変形は、変形期間を平均して1週間当たりの労働時間が法定労働時間(原則40時間)を超えなければ、
(つまり1か月の労働時間が以下におさまっていれば)、1日や1週間での労働時間の上限は設けられていません。
(1年間の変形においては、1日につき10時間、1週につき52時間までという制限があります)
28日≒160時間(40時間×(28日÷7日))
29日≒165時間(40時間×(29日÷7日))
30日≒171時間(40時間×(30日÷7日))
31日≒177時間(40時間×(31日÷7日))
それは、1か月での変形が1か月という比較的短い期間ごとにリセットされるのに対して、1年間での変形は1年という長期間にわたって変形労働となるためです。
暇になったらいくら休んでもいいからと、繁忙期に何か月にもわたって続けて長時間労働をするとなると変形労働時間制の本来の趣旨に反してしまいます。
そのため簡単に3点だけまとめると、同じ変形労働時間制でも、1か月の変形と1年間の変形では、以下のように手続きや守らなければならない決まりにちがいがあります。
1、就業規則のみで導入できるのが1か月の変形労働時間制
変形労働時間制を導入するのであれば、労働時間に関することになるので、就業規則にきちんと要件を記載する必要があります。
1か月の変形労働時間制は就業規則だけでOKですが、1年間の変形労働時間制をするには、就業規則で定めるだけでなく、
労使協定を毎年作成し、労働基準監督署にも届け出なければなりません。
なお、労使協定には主に以下の内容を定めます。
・対象労働者の範囲
・対象期間及び起算日
・特定期間(特に業務が繁忙な時期のこと。定めなくともよい)
・対象期間における労働日及び労働日ごとの労働時間(※)
※対象期間を1が月などの期間ごとに区分した場合は、最初の1が月を除いて全期間の労働日や労働日ごとの労働時間を示す必要まではなく、
各期間の労働日数及び総労働時間を定めてもOKです。あとはその月の30日前までに労働日及び労働日ごとの労働時間を決定できればよいです。
なお、ここで決定した労働日及び労働日ごとの労働時間を変更することは原則できないので注意が必要です。
2、勤務シフトの決定は30日前まででなくてもよいのが1か月の変形労働時間制
1年間の変形労働時間制の場合、それぞれの月の30日前までにはシフト表を決定する必要があります。
実際に保育園では前月末のぎりぎりになってしまうことも多く、計画的に早めにシフトを考えないと30日前を過ぎてしまいます。
1か月の変形労働時間制の場合、この30日前の決定は必ずしも必要でなく、その月の開始前までであればOKです。
3、1日の労働時間、1週の労働時間の上限がないのが1か月の変形労働時間制
1年間の変形労働時間制の場合、1日の労働時間の上限は10時間、1週間の労働時間の上限は52時間と決められています。
1か月の変形労働時間制の場合、1か月の期間の中で、各日の始業・終業時刻、労働時間を定めればよく、1日や1週の上限はありません。
そのため、早番遅番勤務や土曜日勤務は、1か月の変形労働時間制であっても余裕をもってシフトに組み込むことができます。
保育士がいきいき働く、保育園が元気に動く仕組みづくりを支援している社会保険労務士・中小企業診断士の関山です。
専門はこれまでの保育業界での経験を活かした保育園の労務支援・運営支援と想い入れたっぷりの分野です。
珍しい経験から鎌倉・逗子・葉山地域の保育園さまを始め、全国の保育園さまからお問合せいただくことも増えてきました。
そこでここでは園長先生からの労務面やキャリアパスなどに関するご質問やご希望に応えて、
保育園や保育士に役立つ「保育園育て」「保育士育て」の各種ノウハウをお送りしていきます。
ぜひ日頃の保育園の運営や保育士の労務管理、人材育成、キャリアパスなどの参考にされてください。
☆園ごとの具体的な雇用管理やマネジメント等の働きやすい職場環境づくりのための対策などはご遠慮なくご相談ください☆
(社会保険労務士事務所こどものそら舎:http://kodomonosora.jp/)