園長先生からの質問 Q19

“保育に役立つ”園長のための保育園の人事労務講座
~よい労務管理はよい保育を生む土づくり~

私たちの保育園でも土曜日に行事などの予定が入ったときは、代休をちゃんととるようにしています。先日、監査準備をしているなかで、担当する事務職員から、「土曜日の休日に出勤した分の月曜日の休みは、振替休日ですか?代休ですか?どちらにしても時間外手当かもしれません」といわれたんですが、どういうことですか。

1、「振替休日」=「代休」
2、「振替休日」=休日手当も時間外手当も発生しない
3、「振替休日」=休日手当は発生しないが、時間外手当は発生する場合がある
4、「代休」=休日手当は発生しない
5、代わりに休んでいるのであれば気にしなくてよい

答え(1つ)

答えの詳細

「振替休日」と「代休」は別のものなので、出勤簿などに記載する際も、使い方に注意しましょう。

休日出勤をした場合、代わりに別の日に休みをとることはよくあると思います。でも園内で普段何気なく口にする「振替休日」や「代休」という言葉は全くの「別物」なんです。 「土曜日に出勤して来週1日代りに休みをとる」と言っても、それが「振替休日」なのか「代休」なのかによって、労務上の取り扱いは全く異なります。「休日出勤」は、多くの保育園さんでは「振替休日」と「代休」は同じものとして扱われてしまっていることも少なくないようです。

そこで、振替休日と代休の違いを整理していきましょう。

●振替休日=法定休日を他の勤務日と「あらかじめ予定を立てて」交換して労働させ、事前又は事後に休日を与えた場合
→交換したわけですから「休日労働」にはなりません。(休日手当35%に関しては不要です)

●代休=「あらかじめ予定を立てて」勤務日の振替(交換)を行わずに法定休日に労働させ、「結果的に事後に」代休を与えた場合
→休日労働になります。(休日手当35%の割増が必要)

そして留意点ですが、

1、法定休日は週1日ですから、週休2日制の法定休日(日曜日など)でない1日(土曜日など)や祝祭日に勤務させても休日手当(35%の割増)を支払う必要はありません。

2、逆に振替出勤により休日を同じ週ではなく翌週などに振り替えた場合には、1週間の労働時間が40時間を超えることになるので、40時間を超えた部分について時間外手当(25%の割増)を支払う必要があります。

労働基準法では、休日労働を行った場合には「35%以上の割増賃金」を支払うことが定められているのですが、これは「法定休日」に働いた場合に限ります。例えば土日休みの週で土曜日に出勤した場合、同じ週の最初の日曜日に休んでいれば、「週1日」の「法定休日」が確保されています。(特に定めのない場合、1週間の起算は日曜日なので、日曜日から土曜日の間の「1日の休日」が法定休日となります。)そうなると土曜日は「法定外休日」となるため、この日の出勤は「休日労働」とは見なされず、「35%以上の割増賃金」の対象にはなりません。

ただし、多くの保育園では月曜から金曜まで普通に働いた上で、土曜日にも出勤するとなると、「1週40時間」などの法定労働時間を超えることになります。そうなると時間外労働(週に40時間を超える分の労働時間)になるので、時間外手当として「25%以上の割増賃金」がつくことになることに注意しましょう。

なお、1年間や1月間などの変形労働時間制を適切に採用し、「1週40時間」を超える労働時間を法定労働時間として予め事前にシフト表などで1週平均40時間となるように組んでいた週は、この時間外手当の25%の割増も必要がありません。「休日出勤=時間外手当の支給」とすることもすっきりしていてわかりやすいですが、予め休日出勤することが当初のシフト表を作成する段階でわかっていた場合、1週平均して40時間以内となるように、事前に定めた1月間の総労働時間の上限内におさまるように計画してみるのも方法としてあります。

 


保育士がいきいき働く、保育園が元気に動く仕組みづくりを支援している社会保険労務士・中小企業診断士の関山です。
専門はこれまでの保育業界での経験を活かした保育園の労務支援・運営支援と想い入れたっぷりの分野です。
珍しい経験から鎌倉・逗子・葉山地域の保育園さまを始め、全国の保育園さまからお問合せいただくことも増えてきました。

そこでここでは園長先生からの労務面やキャリアパスなどに関するご質問やご希望に応えて、
保育園や保育士に役立つ「保育園育て」「保育士育て」の各種ノウハウをお送りしていきます。
ぜひ日頃の保育園の運営や保育士の労務管理、人材育成、キャリアパスなどの参考にされてください。

 

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